宅建業者の債務不履行による違約金に関し弁済業務保証金から還付を受けた事例
事案の概要
相談者は不動産会社(宅地建物取引業者(以下「宅建業者」))との間で、宅建業者が所有する抵当権の付いた土地を一定の期限内に抵当権を抹消してもらったうえで、売り渡してもらう内容の売買契約を締結していました。
この売買契約書には、売主の責任で約束の期限までに抵当権を抹消のうえ土地を相談者に引き渡せなかった場合は、違約金として売買金額の20%を売主が買主に支払うという契約が締結されていました。
そうしたところ、約束の期限を過ぎても売主(宅建業者)が抵当権を抹消できず、買主である相談者に土地を引き渡せなかったため、相談者は宅建業者に違約金を請求しましたが、宅建業者は倒産寸前であったため支払う余力がありませんでした。
そこで、相談者は当該宅建業者が加入する保証協会が供託所に供託する弁済業務保証金から上記違約金の支払いを受ける手続きを申請したいということで当事務所に相談に来られました。
解決の内容
当事務所の弁護士が、相談者の代理人として、保証協会に弁済業務保証金の還付を受けるための申請手続き(苦情申出)を行いました。その結果、申請から1年ほどかかりましたが請求をした違約金のほぼ全額につき保証協会から支払い対象として認証され、支払を受けることができました。
解決のポイント
宅建業者は、法律により、宅建業を行うにあたって、一定の供託金とよばれる預け金を直接、供託所に供託(預入れ)するか、保証協会に加入したうえで、弁済業務保証金分担金を保証協会に納付することが求められています。
これにより、宅建業者と不動産の売買等の宅建業に関する取引をした相手方(但し宅建業者である場合を除く)は、宅建業者による債務不履行などで損害を被った場合に、当該宅建業者に支払能力がなかった場合でも供託された金額の範囲内で支払を受けられます。
本件では、相談者の取引した相手方宅建業者に資金力がなかったため、供託金から支払を受けるべく、保証協会に苦情申出という手続きを行うことで供託金から違約金の回収ができた事例です。
供託金の請求を保証協会に申請するにあたってのポイントとしては、2点あります。
一つは、なぜその取引で違約金が発生するのかといった経緯を説明書面や証拠書類を添付して詳細に説明する必要があるという点です。
もう一つは、供託金の金額は一定額(例えば、宅建業者の事務所が本店1つの場合は1,000万円となります)に限られており、多数の者がいっせいに供託金からの支払いを求めた場合は、申請が早い者から順番に供託金が支払われるため、申請が遅いと既に限度額まで供託金が払われてしまい、支払を受けられなくなるリスクがある点です。
そのため、取引をした宅建業者から支払を受けることが難しそうだと判断した場合には速やかに、供託金からの還付を受けるべく、資料、経緯等を整理したうえ、保証協会等に申請することが重要になります。